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神経原線維変化型老年期認知症
  

【認知症の種類と特徴】
神経原線維変化型老年期認知症

神経原線維変化型老年期認知症の
主な症状や治療法とは?

「神経原線維変化型老年期認知症(senile dementia of neurofibrillary tangle type : SD-NFT)」は、数多くある認知症のひとつですが、その名前を聞いても「あまり耳慣れない」と感じる人が多いのではないでしょうか。この記事では、その名の通り老年期において見られるようになる神経原線維変化型老年期認知症について、その特徴や原因、症状、さらに診断方法や治療についてまとめました。

神経原線維変化型老年期認知症の特徴

1990年代に発見された神経原線維変化型老年期認知症は、「辺縁系神経原線維変化認知症」や「神経原線維変化優位型老年期認知症」「神経原線維変化を伴う老年期認知症」などとも呼ばれる認知症の一種です。

大きな特徴は「高齢で発症するケースが多い」という点。このほかにもいくつか特徴が挙げられていますので、ひとつずつ確認していきましょう。

高齢になるほどに発症の割合が高まる

高齢になればなるほど発症の割合が高まることが、神経原線維変化型老年期認知症の大きな特徴です。その発症頻度は認知症全体の数%程度。高齢者認知症剖検例(病理解剖)の1.7〜5.6%に見られると報告されていますが、90歳以上の認知症発症例の20%を神経原線維変化型老年期認知症が占めるとされています。

タウたんぱく質の蓄積が発症につながる

アルツハイマー病はアミロイドβたんぱく質の蓄積(老人斑)とタウたんぱく質の蓄積(神経原線維変化)が見られますが、神経原線維変化だけが見られ、老人斑はない、あるいはあまり見られないのがこの神経原線維変化型老年期認知症の特徴です。この神経原線維変化は海馬領域に大量に認められ、新皮質に見られることはまれだと言われています。

症状はゆっくりと進行することが多い

神経原線維変化型老年期認知症においては、もの忘れが症状の中心ですが、比較的ゆっくりと進行するケースが多いと言われています。記憶障害以外の認知機能は比較的保たれていることが多いため、言語障害や行動障害、性格の変化などの症状はあまり見られないことも特徴のひとつです。

診断が難しい認知症のひとつ

認知症はアルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症などさまざまな種類があり、症状の違いや各種検査によってどの認知症か判断されます。しかし、神経原線維変化型老年期認知症の確定診断を行うためには脳の神経細胞を顕微鏡で観察する必要があるため、診断が難しいとされています。そのため、アルツハイマー型認知症と診断されているケースの2割前後が神経原線維変化型老年期認知症に該当するという報告もあります。

神経原線維変化型老年期認知症の症状

神経原線維変化型老年期認知症は、記憶障害が主な症状となっていますが、症状が進行する速度は比較的緩やかだと言われています。高齢になってから発症したアルツハイマー型認知症との共通点も多くありますが、神経原線維変化型老年期認知症の場合、ほかの認知機能障害や人格の変化は比較的軽度なことが多いようです。ただし、症状が進行していくと失見当識や認知機能障害があらわれる認知症段階に進みます。

また、まれにせん妄や軽度の錐体外路症候が見られることがあります。この錐体外路症候とは、錐体外路と呼ばれる神経系の障害により出現する症状。パーキンソン症候群とも呼ばれ、筋肉が固くなったり手足が震えたり、姿勢を保つことが難しくなったりといった症状があらわれます。

神経原線維変化型老年期認知症発症の原因

神経原線維変化型老年期認知症は、脳の海馬を中心として多数の神経原線維変化(タウたんぱく質が繊維を形成し、神経細胞の中に蓄積した状態のこと)が見られます。

この海馬領域は、加齢とともに神経原線維変化が出現しやすいと言われている部分です。そのため、認知症の症状があらわれていない高齢者でも、海馬の付近には神経原線維変化があらわれてくることが知られています。そのため、神経原線維変化型老年期認知症は、加齢による脳の老化が加速されることによって発症するものであると考えられています。

神経原線維変化型老年期認知症への対処方法

神経原線維変化型老年期認知症の疑いがある場合には、どのように対処すれば良いのでしょうか。ここでは、神経原線維変化型老年期認知症の診断方法・治療方法についてまとめています。

検査・診断

診断には、脳を調べるためにCTやMRIを用いて画像検査を行っていきますが、前述の通り、神経原線維変化型老年期認知症は診断が難しい認知症のひとつとされています。

しかし、高齢の認知症患者の中では神経原線維変化型老年期認知症が見られる頻度が多くなっています。その患者の多くは、生前はアルツハイマー型認知症と診断されていますが、嗜銀顆粒性認知症や血管の病変との重複病理も多く見られます。以上のことから、アルツハイマー病や嗜銀顆粒性認知症との違いを見極めることも診断の上でポイントになってきます。

アルツハイマー病と神経原線維変化型老年期認知症は、記憶の障害が主な症状であることや、病変が側頭葉内側部に強く見られることなど多くの共通点がありますが、神経原線維変化型老年期認知症の方が進行は緩やかです。また、神経原線維変化型老年期認知症はアミロイドβの沈着があまり見られないことから、脳内にアミロイドβがどの程度沈着しているかを診断できる「アミロイドPET」もアルツハイマー型認知症との鑑別診断に有効とされています。

また、嗜銀顆粒性認知症も、内側側頭葉に病変がある、記憶の障害が起こるといった共通点が多いものの、異常行動や怒りっぽさ、性格の変化といった症状が異なる点です。さらに内側側頭葉に起こる萎縮は、嗜銀顆粒性認知症の場合は前方に優位に見られるのに対し、神経原線維変化型老年期認知症の場合は比較的後方に目立つといった違いがあります。

治療

神経原線維変化型老年期認知症に対して、有効性が証明されている治療法はまだ見つかっていません。神経原線維変化型老年期認知症の多くは、アルツハイマー型認知症の臨床診断を受けることでコリンエステラーゼ阻害薬(脳内のアセチルコリンを分解する酵素の働きを抑える薬。アルツハイマー型認知症の場合、脳内のアセチルコリンの活性が低くなっていることがわかっています)が投薬されています。

また、認知症発症につながるタウたんぱく質の蓄積過程を標的とするタウ標的療法が現在開発中ではあるものの、神経原線維変化型老年期認知症に対する治療法はいまだに見つかっていません。そのため、神経原線維変化型老年期認知症に関しては、臨床診断と治療方法の発展に期待するしかないのが現状です。

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記事監修

日本認知症学会
名誉会員
本間 昭 医師

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